東神クリニック院長 株式会社アルチザンラボ研究員 医師・医学博士 柴田和彦様より

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人工透析治療では、ボールペン程の太い注射針での穿刺による痛みが激しいため、痛みをなくすことも出来るボタンホール法の改良に日々取り組んでいます。

1972年にポーランドで開発されてから、先の尖っていないダルニードルで刺すボタンホール法はあまり進歩がありません。

そこで50年使われているダルニードルに代わる金属針で、先端が丸く中央にあり、痛みが少ない形状を思いつきました。

この形状ですと、竹を切ったような構造のダルニードルは、血管に至る皮下トンネルの壁をこすりながら進むのに対して、先端が中央にあるため壁をこすりにくく痛みが減り、トンネルから逸脱する事が減ると考えられます。

しかし歴史上、誰も製作できていないため製造法を探していました。

今までも産総研様とミドリムシから「痩せる物質」を作る研究や神鋼環境ソリューション様と糖尿病を防ぐ薬の開発、世界最強の止血物質を発見しニプロ様とともに「ノブリード」の開発等も行って参りましたが、
すべて患者様、スタッフの苦痛や不便さを解決したいと思い、取り組んできました。

その中でも、透析用の針はとても太くボールペンの芯くらい有り、穿刺した際、激痛を伴い腕が変形することに心を痛めてきました。
週3回、年間300回も針を刺されるのですから、その苦痛を少しでも軽減したいと思うのは当然です。

そこで1972年にポーランドの医師が開発したボタンホール法の改良に取り組み、最大の欠点と言われる感染を私が開発したクリーンボタンホール法で克服しつつあります。

また、トンネルを進むのに先端が端にある針を、先端が中央でトンネルを進みやすい構造に改良したいと考え、全く新しい形状の針を発案しました。この構造だと毎回同じところを刺しても滑り入るように、忍び込むように針を入れることが出来そうです。しかし、この造形はものすごく難しいものです。

DOHO様の3Dプリンターから出てきたものは、私のstlファイル通りの構造でしたが、掘り出された埴輪のような感じでした。これはだめだ・・・と思いましたが、感心した点は、担当してくださった方の異常な粘り強さでした。

注射針は針の表面はもちろん、内腔も可能な限り滑らかにする必要があります。
先ほど書いたように、3Dプリンターから出てきた直後はやすりのような質感で、あれを刺したら患者様は痛みで絶叫される状態だと思います。ここからのしつこさがすごかったです。まずはやすりで表面を削ってきて下さいました。

これでは内面が荒くて血液が凝固してしまいますと申し上げたところ、ビーズを高速で当てて研磨する方式で、ビーズのサイズ、当てる角度などを様々に工夫して下さいましたが、内腔の研磨は出来ませんでした。

そこで、酸に浸して研磨する方式を行って下さいました。
しかし、言うは易く行うは難しで、酸は容赦なく表面を溶かしてゆくので針の厚みが減ります。
そのため様々な厚みで針をプリントし、酸の強さや含浸時間を変えてサンプルを持ってきてくださいました。
浸しすぎてゴミみたいになったものもありました。

どのトライアルでも適当に次に行くことはなく、とことんその方式で目指す平滑さに内外共にたどり着けないか本当に努力して下さいました。
ですので、しつこい私が考えてもプリントされた状態から平滑な針の表面に加工することが出来ないという点が納得できました。

今回、プリンターだけで終わらない、プロフェッショナルなものつくりを見せて頂きました。
100回三振したけどヒットはなかったバッターのようでは有りますが、いつか必ずホームランを飛ばされる方だと思います。その執念と、考えて工夫して可能性のある事すべてにトライして頂いた今回の担当者を心から尊敬いたします。

いろいろとありがとうございました。