業界初の試み! 旧車3Dプリントシリンダー製作プロジェクト

高品質なシリンダーを3Dプリンタで!
プロジェクト始動


内燃機加工のプロである井上ボーリング様と金属3Dプリンタの国内総代理店を務める株式会社DOHOが手を組み、金属3Dプリンタでエンジンの中核である高品質なシリンダー製作に挑戦いたしました!

左:株式会社DOHO 代表取締役/粟飯原     右:株式会社井上ボーリング 代表取締役/井上様

独特のエンジン音や操作性、レトロなデザインで世界的にも人気を集める旧車や絶版車。根強いファンにより、生産終了となった旧車パーツには一定の需要があり、高額で取引され、価格も日々高騰しています。

KAWASAKI_MACHⅢ750

「エンジンという遺産を未来へ繋ぎ、旧車を蘇らせたい」というコンセプトを掲げる井上ボーリング様は、バイクファンに向けてより低価格で高性能の旧車パーツを提供できるよう試行錯誤を重ねています。

一方、弊社では3Dプリンタの新たなニーズや可能性を追求し、3Dプリンタ市場の拡大を狙い、本プロジェクトがスタートいたしました。


井上ボーリング様はこれまで3Dスキャン+切削加工による製作実績がありましたが、金属3Dプリンタを利用したシリンダー製作は初の試みです。

内部の冷却経路や強度バランス、熱伝導特性など、あらゆる性能要素を兼ね備えながらも、より高精度・高効率な製品づくりを目指しました。

本プロジェクトの3Dプリンタで製作したシリンダー

まず、弊社DOHO側でZRapid社製金属3Dプリンタにてシリンダーブロックの製作を行い、完成後井上ボーリング様にてシリンダーの二次加工やスリーブの製作・圧入作業を担当して頂きました。
最終的には寸法精度や表面性状等、純正の新品と遜色のないシリンダーが完成しました!

手前:3気筒分の3Dプリントシリンダーブロック 奥:ICBMスリーブ(高硬度メッキアルミスリーブ)

製作プロセス


1. 3Dデータ準備

井上ボーリング様より3Dデータを頂き、そのデータを基に変形を抑え、仕上がりに影響がないよう造形姿勢を検討し、サポートを設計。

シリンダーブロックの3Dデータ

2. 3Dプリンタにて積層造形

ZRapid社製SLM方式の金属3Dプリンタにて、3つのシリンダーを同時に造形。
所要時間は約40時間。レーザー照射完了後は、金属粉末を除去します。

ZRapid社製金属3Dプリンタ「iSLM420D」

【使用機材と材料】
方式:SLM方式
メーカー:ZRapid社
機種:iSLM420DN
(ワークサイズ420×420×500)
レーザー本数:2本
材料:アルミ合金(AlSi10Mg)

3. 熱処理

造形後の歪みや変形を防ぐため、熱処理炉に入れ、残留応力を除去する工程です。

熱処理炉へ投入

4. 基板切り離し

放電ワイヤーカット機にて、基板と完成品を切り離します。

放電ワイヤーカット機による切り離し作業

5. サポート除去

形状上やむを得ない箇所や変形防止のためにつけたサポートを丁寧に除去します。

6. ブラスト処理

粒子状の研磨剤を吹き付け、表面全体を滑らかにします。

7. 二次加工

精度が要求される部分はCNC加工機にて研磨を行います。

CNC加工での研磨

加工後のシリンダーは井上ボーリング様が仕上げ工程を担当。

独自開発のICBM(高硬度メッキアルミスリーブ)を圧入し、耐久性・機能性ともに優れたシリンダーが完成しました!

スリーブをシリンダーブロックへ

JIMTOF展示会にて公開


2024年11月に東京ビッグサイトで開催された「JIMTOF2024(第32回日本国際工作機械見本市)」において、弊社はAdditive Manufacturing Areaに出展し、金属3Dプリンタや関連設備の実機展示を行いました。

完成したシリンダーは「旧車再生プロジェクト」としてマッハⅢの実機と共に展示し、多くの来場者の関心を集めていました!

DOHOブース@JIMTOF展示会
JIMTOF会期中の様子

抜群の乗り心地!走行テストの実施


実用化を見据えた今回のプロジェクトでは、井上ボーリング様ご協力のもと、筑波サーキットにて走行テストも実施。
ライダーの後藤様からは「想像よりも随分いい。非常にスムーズで振動も少ない。精度が高く、3気筒全てきれいに爆発しているからだと思う。」とのこと。

走行後、シリンダーに変形や傷はなく、機能性、耐久性ともに問題がないことを確認しました。

3Dプリンタで製作したシリンダーを搭載
コース入りの最終準備
約2kmのコースを20分×3本走行!

今後の展望


今回のプロジェクトは、旧車用部品の再生方法として金属3Dプリンタの有用性を実証した一方で、「コスト」が課題であることも明らかになりました。
品質や製作スピードには問題はないものの、量産化・普及にはさらなる工夫が必要です。

DOHOでは現在、コストダウンに向けた新たな取り組みを進めており、2025年中の実現を目指しています。また、シリンダー以外にもクランクケースなど他部品への応用も積極的に検討中で、二輪だけではなく、四輪のパーツにも将来的には応用できればと思っています。


バイク専門誌「Gワークスバイク」で紹介されました
本プロジェクトの内容をバイク専門誌「Gワークスバイク(2025年5月号)」にて紹介されました!