
金属3D造形体験コース
~電子ビーム積層造形編~
@大阪産業技術研究所
先日、大阪産業技術研究所が主催する「金属3D造形体験コース:電子ビーム積層造形編」に参加してきました!
大阪産業技術研究所は、中小企業の技術指導・技術支援と企業のレベルアップを目的とし、幅広い産業分野に対応した公設試験研究機関です。 本部が設置されている和泉センターには、「3D造形技術イノベーションセンター」が設けられ、金属3Dプリンタやその周辺装置を保有し、金属3D造形の高度な研究開発や試験評価を実施できる国内トップクラスの総合拠点となっています。
当施設が保有する金属3Dプリンタは粉末床溶融結合法(PBF:Powder Bed Fusion)に分類されるレーザー方式(SLM:Selective Laser Melting)と電子ビーム方式(EBM:Electron Beam Melting)、指向性エネルギー堆積法(DED:Directed Energy Deposition)の3種類。
今回のセミナーはその中の「電子ビーム方式」について知識を深めるイベントとなっています。
一方で、弊社はZRapid社のSLM方式の金属3Dプリンタを保有しており、金属3Dプリンタの導入支援や3D造形サービスを中心とした事業を展開。
弊社が取り扱うSLM方式は電子ビーム方式と同じ粉末床溶融結合法(PBF:Powder Bed Fusion)に分類されますが、稼働準備~造形~後処理までの流れやアイテムの仕上がり具合もまったく異なります。
今後、別方式の3Dプリンタの取り扱いを増やすことを見据え、知識のバージョンアップもかねて、今後の参考になれば!と今回のセミナーに申し込みました!
2日間にわたるセミナーのスケジュール
2月17日 ♦座学「電子ビーム積層造形の概要」
♦実習「造形物の取り出し」
♦座学「金属3D造形技術の概要」
2月18日 ♦実習「造形準備」
♦座学「設計・解析技術」
♦座学「Magicsの機能」
♦個別相談
♦造形の様子の見学
弊社を含め、各日3社ほどセミナーに参加、少人数で説明も聞きやすく、有意義な時間を過ごすことができました。
当該施設は、適切な空調管理が施されており、3Dプリンタや付帯設備だけでなく、造形品も見やすい配置がされていました。

電子ビーム積層造形装置
EZ300(三菱電機株式会社製)
3Dプリンタへの粉末投入作業や造形完了後の完成品を取り出す作業等、実際に研究員の方が一つ一つの工程を丁寧に説明してくださり、座学では基礎的なメカニズムから、現在取り組んでいる応用的な研究内容の説明まで、広範囲のレベルに対応する内容であり、実践と合わせて受講できることで、理解がさらに深まりました。
大きなメリットとして感じられたのは、内部応力がほとんど残らない点です。
電子ビーム特有の現象として、ビーム照射時に金属粉末が帯電し、飛散する現象を抑制するため、工程中に粉末床を「加熱」し高温の状態に保ちます。
造形後は、完成品は金属粉末でできた仮焼結体に覆われてでてくるため、それを取り除く必要があるのですが、内部応力はほとんど残っていません。
仮焼結体を取り除き、
完成品を取り出す作業
(セミナー実習編にて)

ハイレベルなトポロジー最適化の講義では、サポートや応力を考慮しながら、どれだけ精巧な3Dデータを製作できるかが仕上がりを左右する重要なポイントであることも再認識。これまで数年経験を積んできましたが、まだまだ3D設計における技術向上余地があるなと感じています。
このように再発見・再認識できるポイントも多く、3D造形における課題もさらに明白になり、今後のモチベーションに繋がる良いきっかけとなりました。

講習内で3Dプリンタより、
取り出したサンプル
弊社の造形サービスではSLM方式の3Dプリンタのみを利用しています。
将来的には、電子ビーム方式の選択肢を増やし、その特性を生かすことにより、大きさや形状によってはコストカットやお客様のご要望に近づけられる可能性が大いにあると感じています。
特に銅での製作を希望される場合、SLM方式だとレーザーをグリーンレーザーに変更する必要があり、電子ビーム方式での造形にかなりのメリットを見出すことができます。
今後弊社でも電子ビーム方式の3Dプリンタで造形できる環境を整え、対応できるアイテムの幅を増やし、3D技術の発展に貢献できればと思っています!

レポーター
金 成日(キン セイヒ)
チーフエンジニア
ZRapid認定インストラクター